再生可能エネルギーを生み出す超小型バイオガスプラントを遠隔監視(PLC経由)し安定稼働を支援

顧客名

株式会社ビオストック様

概要

IoT.kyotoは、メタン発酵技術により、有機性廃棄物(バイオマス)からバイオガス(再生可能エネルギー)を創出する超小型バイオプラントに搭載する遠隔監視システムを提供いたしました。

環境問題などの社会課題に対し、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業は増加しています。株式会社ビオストック様はNTT東日本様と共同で食べ残しや農場などの廃棄物をエネルギーや液肥に転換するバイオガスプラントを提供するとともに、より良いソリューションとするための実証実験を行っておられます。

プラントにはさまざまなセンサーやアクチュエーターが備えられており、それらをPLCでセンシング&コントロールしています。PLCが持つセンサー情報や制御情報を取得し遠隔監視することでデジタルツインを実現することができます。
本事例では、PLC内の情報を読み出しセルラー網経由でクラウドにデータ送信することができる専用のゲートウェイ(たけびし製デバイスゲートウェイ)を利用し、いつでもどこでもWeb画面でプラントの稼働状況を確認することができるようにしました。これにより、従来の目視で定期的に現場に足を運び制御盤を確認する労力や異常検知から正常な状態へ戻すまでのタイムロスをできる限り減らし、環境にも人にもやさしいプラントを実現させました。

バイオガスプラントの遠隔監視システム導入のご担当者、石川様よりバイオガスプラントのIoT化と今後の展望について熱い想いをお伺いいたしました。

現在のシステムはスタート地点でしかありません。今後も引き続きIoTシステムを育てていきたい

——バイオガスプラントの遠隔監視の構想についてお聞かせください。

ビオストックは2020年7月に設立いたしました。
もともとは一次産業の課題を解決する目的のため、自身も酪農業にてOJTを行いながら、酪農家が処理に困っている糞尿を使って、再生可能エネルギーに変換するプロジェクトを進めていました。同時に、同じ仕組みでフードロスを再生可能エネルギーにリサイクルできることが分かり、共通して使えるような遠隔監視システムの構築を模索しました。
当初は親会社であるNTT東日本の強み、通信インフラやAI、IoTを駆使し、スマートなバイオガスプラントの開発を進めていました。この点についてはお客様からも期待の声をいただいていました。
しかし、プラントの中身を知れば知るほど複雑でサービス化するのに必要な共通化が難しいことがわかりました。困っていたところ、NTT東日本社員にIoT.kyotoさんをご紹介いただきました。



——IoT.kyotoに遠隔監視システムの構築を依頼する決め手は何かございましたか?

お打ち合わせの中で、IoT.kyotoさんのシステムはビオストックがやりたいこと、求めている形に非常にフィットすると感じました。一方でどういう形で事業に組み込んでいくか、悩みました。
そんな中、NTT東日本と共同で食品廃棄物を再生可能エネルギーにリサイクルするバイオガスプラントを実際に設置することになりました。そこで、設置するバイオガスプラントに実際に遠隔監視システムを導入してみましょうという流れになり、この設置が非常に良い機会になりました。

提供する側が良いものだと理解していても、実際に稼働していない遠隔監視システムを「このサービスは使えますよ!」とは言いづらいものです。実際に形を作ることでお客様への説明もしやすくなりますし、お客様の理解度や納得感も高まります。

—— 導入時に何か困ったことはございましたか?

PLC周りのレギュレーションを決めるのが少し難しいと感じました。ITのように詳細な仕様書があるわけではなく、ほとんどが口頭説明なため、理解に時間がかかってしまいました。現場の方と会話する際はこちらの理解度と現場の方の理解度がなかなか噛み合わず、円滑に進めるためのコミュニケーションも十分に行えませんでした。IoT.kyotoさんには現場の方のお話をかみ砕いて理解される方々がいて、我々と現場の方との間に入り、お互いの納得いく形でレギュレーションを定めることができ、本当に助かりました。

AWSなどのクラウドサービスの活用やWEBアプリを作る方々の世界と、現場で実際に働いていらっしゃる方々の世界が全くの別次元になってしまっていることは、企業のDX化を推し進めていく上での障壁になっていると思います。現場の方が使う言葉を理解できるエンジニアの方など、2つの世界を繋げられる存在の重要性を感じました。

PLC
デバイスゲートウェイ

—— 導入後、何か変化や効果はございましたか?

導入以前、「IoTソリューションに仕事を奪われるのではないか」と不安に思っていた現場の方もいたのですが、実際に遠隔監視の活用方法を知ってもらうことで「データはデータを扱っている企業にお任せするのが一番。餅は餅屋」「IoTソリューションは競合ではなく共存だ」と考えを変えてもらうことができました。現在では喜んでWEBアプリ画面を見てもらっています。

WEBアプリ画面(サマリー版)

また、WEBアプリページをデザインからカスタマイズして作成したことにより、バイオガスプラントのエンドユーザーになる食品工場の担当者の方にも見やすくて使いやすいと好評いただいています。集中制御室に遠隔監視システムが既にある工場も多いですが、画面が見づらくデータを確認しにくいため、結局は工場長が制御盤を直接確認しに行っている場合も少なからずあります。

作っていただいた画面は普段私たちがプライベートで使っているアプリと相違なく、見やすく使いやすいインタフェースになっています。お客様だけでなく私たちもゲーム感覚でWEBアプリ画面を確認し、バイオガスプラントを育てているような感覚でいます。休日に家にいても「今、プラントはどんな感じかな?」と確認してしまうくらいです。バイオガスの温度をスマホでつい確認してしまうようになるとは思いもしませんでした。

WEBアプリ画面(スマホ版)


デザインに関してもバイオガスプラントが食品廃棄物をメタン化するまでのストーリーをご理解いただいた上で作成していただいているので、非常にわかりやすく、お客様にも共感していただきやすいデザインになっています。画面を見たお客様が「見やすい」「見た目がいいので使ってみたい」と思っていただきたくてお願いしたものなので、満足しています。

—— 今後の展望について教えていただきたいです。

現在、エラーアラートが発生した場合、エラーへの対処が経験や勘に頼ってしまっている部分があります。今後は蓄積したデータをAIなどを活用してどのように対処するかをサジェストしていきたいと考えています。またデータの分析方法や活用方法、アラート発報の閾値などを見直す、エラーへの対処に対し、お客様にやっていただくこと、ビオストックがやることを切り分け、システム自体を育てていきたいです。

プラントの遠隔監視についてはマルチテナント前提で作成しています。現在は弊社の提供する超小型バイオガスプラントに標準搭載していますが、今後他社製のプラントにも使っていただきたいと思っています。早速、マイクロ風車の遠隔監視に応用展開もしていますので、食品工場だけでなく様々な分野でお客様のニーズをお伺いしながら横展開につなげていきたいです。

また、食品廃棄物のリサイクルを今よりもっとかんたんに広く普及していきたいです。メタン発酵技術は完全に化学なので特に難しく、大学のラボにある特殊な機械でないと取得できないデータもあります。ラボでしかわからない数値と市販のセンサーで取得できる数値で相関するデータがないか現在研究しています。現在のシステムはスタート地点でしかありません。市販のセンサーでさらに多くの数値が取得できて、誰にでも運用できるようにしたいです。

打ち合わせを重ね、ビオストックが目指している世界観とIoT.kyotoさんが構築する世界観は合致していると感じています。ぜひビオストックが目指す世界を実現できるよう、今後も継続的にIoT.kyotoさんにはご協力いただきたいです。

マイクロ風車への応用展開もIoT.kyotoがご協力しました

まとめ

実際に現地に向かい、IoT.kyotoが提供したシステムを装備した設備を確認し、インタビューを行いました。ビオストック様は現在、バイオガスプラント以外にも様々な視点から地域産業の課題解決に向けて取り組まれています。IoT.kyotoでもバイオガスプラントの遠隔監視システムをご提供させていただく中でSDGsについて改めて考えるきっかけとなりました。
取り組みの中で徐々に明らかになってきた課題解決についてはIoT.kyotoが掲げる「新たな価値を創造する」という価値観とも合致します。ビオストック様が目指す社会実現にIoT.kyotoは今後も伴走型のご支援を続けてまいります。

参考記事

ビオストック様ニュースリリース:バイオガスプラント遠隔監視サービス「おまかせバイオガスプラント」提供開始について
AWS導入事例:ビオストック、超小型バイオガスプラントの IoT による遠隔監視サービスに AWS を活用し廃棄物処理コストの削減や SDGs を推進