AIカメラで保護具の着用を確認し、工場作業員の安全性の確保を実現

※掲載画像はイメージです

顧客名

概要

AIカメラ「Vieureka」を利用し、フェイスシールドや防毒マスクなど保護具の着用判定を行うアプリをご提供しました。このシステムには、判定結果に応じてパトランプを光らせ警報音を鳴らす仕組みや、Vieureka関連ツール「Vieureka Manager」での機器の遠隔管理システムなども付随します。これらのソリューションは、AIカメラでの課題解決をローコストかつスピーディに実装するIoT.kyotoサービス「AIカメラお手軽導入パック」で実現しました。

システム構成図
システム構成図

AIの不確定要素と堅実に向き合う

近年ますます需要の高まる画像AIですが、その活用は発展途上であり、ビジネスの現場での実用性をかなえるにはいくつかのハードルがあります。また「実用性」ひとつとっても、お客様や課題ごとにその要求レベルは様々です。
IoT.kyotoがご提供する「AIカメラお手軽導入パック」では、AIカメラ導入のハードルを下げるため、以下のようなステップに分けてシステム開発を行います。

AIカメラお手軽導入パック導入イメージ
画像引用元:AIカメラお手軽導入パック – IoT.kyoto

今回フェーズ1ではお客様にAIカメラを貸与し、実際のユースケースに近い状態の画像の収集と、これを利用したAIモデル・ロジックの選定や試作モデルでの検証をPoC(実証実験)の形式で行いました。
試作モデルにて防毒マスク、フェイスシールド等の検出ができ、また改良の可能性も見出せたため、お客様のご納得の上でフェーズ2に取り組みました。

モデル精度向上の鍵は「アイデア」

実際にフェーズ1とフェーズ2でどのくらい検出精度が向上したか簡単にご紹介いたします。

以下の表に、各検出対象のフェーズ別での検出精度を表しています。

検出対象フェーズ1モデルフェーズ2モデル
約97%約99.5%
1%未満約95%
防毒マスク約77.5%約99%
フェイスシールド約67.3%約95%

フェーズ1の時点でまずまずだった防毒マスクとフェイスシールドの検出精度が大幅に向上していることがわかります。また、フェーズ1で課題となっていた鼻の検出も結果的に十分な精度を得ることができました。

例えば鼻の検出について、フェーズ1では「鼻」そのものを対象としていましたが、フェーズ2では「防毒マスクと鼻」というラベリングに変更することで、防毒マスクの正しい着用時と比べやすくなり、大幅な向上が見られました。

判定ロジックの工夫としては、フェイスシールドの検出が良い例です。フェイスシールドの目印が画像内に見つかるかどうかだけでなく、それが顔のどのあたりにあるか、3つの目印のうち何個検出されているかなどのデータを用いて総合的に判断をしています。

さらに、実際の判定を決める際には、同様の検出が何回もなされているかも判断基準に含めているため、実際には表にある精度よりも高い水準で正しい判定を行っていると言えます。

このように、AIアプリのレベル向上には、AIモデルそのものの精度だけでなく、アプリの作り込みやその周辺要素も重要な役目を果たすことがおわかりいただけるかと思います。

現場訪問せず、全てリモートで開発してご納品

試作段階のAIアプリを実用システムに押し上げるフェーズ2では、お客様と適宜認識合わせをしつつ、フェーズ1のPoC(実証実験)環境を生かして開発を進めます。(各フェーズでのAIに関する技術的な試行錯誤については、研究開発の記事として追ってまとめたいと思います。)

AIカメラの判定結果に応じたパトライト操作には、Moxa株式会社が販売する「イーサネットリモートI/O」注1を利用しました。ローカルネットワークからのアクセスで、AIカメラの判定結果を即座に機器の入出力に反映できます。

今回のシステムの一部として導入したMoxa
今回のシステムの一部として導入したMoxa

こちらのMoxaはお客様がご用意されたため、我々はそれをお借りして検証に用い、最終的にはアプリを組み込んだAIカメラと一緒にお送りしました。設置のために必要な作業は、各機器の電源の確保とローカルネットワークへの接続のみととてもシンプル。現場の作業員の方が機器導入にご対応くださりました。リモートでの動作検証にご協力いただいた後は、実際に利用する形でお客様にも動作確認いただき、結果的に一度もオフラインで顔を合わせることなく受注から納品まで行っています。

開発者である我々と、本社・現場それぞれでご活躍のお客様とで協力して開発に取り組み、結果、各フェーズでおよそわずか2ヶ月程度の期間で、お客様にご満足いただけるシステムを完成させることができました。

今後について

今回納品したAIカメラアプリは、様々な種類がある防毒マスクの一部にのみ対応しました。今後、お客様の別の現場にも導入を進めるため、対応マスクを増やすことなどを検討されています。また、画像データ活用や一元管理システムなども検討中とのことで、製品の活用の幅を広げていただけることを開発側として大変嬉しく思います。

IoT.kyotoでは今後もAIを利用したシステムについてご相談から導入・運用、そして拡張まで幅広くお客様をサポートいたします。

注1「ioLogik E1200 シリーズ – ユニバーサルコントローラおよびI/O | MOXA

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AIカメラお手軽導入パック

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